日本の子どもは睡眠時間が短い? 成長・学力・肥満にも関係する子どもの睡眠
「うちの子、寝る時間が遅いけれど大丈夫かな?」
「毎朝なかなか起きられない……」
「勉強や習い事で忙しく、睡眠時間が足りていない気がする」
このような悩みを持つ保護者の方も多いのではないでしょうか?
スマートフォンやゲーム、動画配信サービスなど、子どもたちが夜遅くまで起きていられる環境が整った現代。
実は、日本の子どもは世界的に見ても睡眠時間が短い傾向にあり、睡眠不足が健康面での課題になっています。
睡眠は、単に身体の疲れを取るためだけの時間ではありません。
身体の成長や脳の発達、記憶の定着、さらには肥満や心の健康にも関係しています。
今回は、日本の子どもの睡眠時間の実態と、睡眠不足が身体に及ぼす影響、そして家庭でできる睡眠習慣の整え方について解説します。

1.日本の子どもはどのくらい寝ているの?
まずは、実際の調査結果を見てみましょう。
2025年3月に公表された博報堂教育財団こども研究所の調査では、学校がある日の平均睡眠時間は次のようになっています。
学年 | 平均睡眠時間 |
小学4〜6年生 | 8時間56分 |
中学生 | 7時間57分 |
※全国の小学4年生〜中学3年生を対象とした調査結果です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、小学生は9〜12時間、中学生・高校生は8〜10時間の睡眠時間を確保することが推奨されています。
今回の調査結果では、小学生・中学生ともに平均睡眠時間が推奨範囲の下限をわずかに下回っていました。
また、調査では、子どもたちの6割以上が「もっと夜遅くまで起きていたい」と感じていることも分かっています。
睡眠が大切だと分かっていても、ゲームや動画、友達とのやり取りなど、夜の時間を楽しみたい気持ちもあるようです。
さらに、理化学研究所などが進める「子ども睡眠健診」プロジェクトでは、2022年から2024年末までに集まったデータを分析した結果、多くの子どもが推奨される睡眠時間を満たしていないことが報告されています。
平日の睡眠不足を休日に補う傾向も見られ、学年が上がるにつれて平日と休日の起床時刻の差が大きくなることも明らかになりました。
ただし、これらの結果だけで、昔と比べて日本の子どもの睡眠時間が一貫して減り続けていると断定することはできません。
それでも、現在、多くの子どもが十分な睡眠時間を確保できていないことは、見過ごせない問題です。

2.睡眠不足は子どもの成長に影響する?
「寝る子は育つ」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。
実際、睡眠には身体の成長や組織の修復を支える大切な役割があります。
成長ホルモンと睡眠の関係
身体の成長に関係するホルモンの一つが、成長ホルモンです。
成長ホルモンは、骨や筋肉などの成長を支え、身体の組織の修復や代謝にも関わっています。
成長ホルモンは睡眠中にも分泌され、特に深いノンレム睡眠の際に多く分泌されます。
ただし、「夜10時から深夜2時までが成長のゴールデンタイム」といった単純な話ではありません。
成長ホルモンの分泌には睡眠の深さなどが関係するため、特定の時間帯だけにこだわる必要はありません。
大切なのは、子どもの年齢に応じた睡眠時間を確保し、規則正しい生活を送ることです。
また、身長の伸びには遺伝や栄養状態、運動、ホルモンの働きなど、さまざまな要因が関係しています。
睡眠時間を長くすれば必ず身長が伸びるというわけではありませんが、健やかな成長を支えるためにも、十分な睡眠は欠かせません。

3.睡眠不足は学力や記憶力にも関係する?
睡眠と学習能力の関係も、注目したいポイントです。
私たちの脳は、日中に経験したことや学んだことを整理し、記憶として定着させる働きを持っています。
その過程において、睡眠は重要な役割を果たしています。
例えば、学校で新しい漢字を覚えたり、算数の問題を解く方法を学んだりしたとしましょう。
日中に学習した内容は、睡眠中の脳の働きによって整理され、記憶の定着が進みます。
一方、睡眠時間が不足すると、次のような影響が生じる可能性があります。
授業中に眠くなる
集中力や注意力が低下する
学んだ内容を覚えにくくなる
気分が不安定になりやすくなる
もちろん、学力は勉強時間や学習方法、本人の興味など、さまざまな要因によって変わります。
睡眠時間だけで成績が決まるわけではありません。
しかし、睡眠不足によって集中力が低下してしまえば、せっかく勉強しても十分に力を発揮できない可能性があります。
勉強時間を増やそうとして睡眠時間を削るよりも、十分な睡眠を確保したうえで学習することが大切です。
「勉強する時間」と同じくらい、「学んだことを定着させる時間」も大切にしたいですね。

4.睡眠不足は肥満にも関係する?
意外に感じるかもしれませんが、睡眠不足は子どもの体重や代謝にも関係しています。
その理由の一つとして、食欲を調節する仕組みへの影響が考えられています。
睡眠が不足すると、食欲に関係するホルモンの働きや、食べ物に対する欲求などに変化が生じることがあります。
また、夜遅くまで起きていると、夕食後にお菓子を食べたり、甘い飲み物を飲んだりする機会も増えやすくなります。
さらに、睡眠不足によって日中の活動量が低下すれば、消費エネルギーにも影響する可能性があります。
こうした要因が重なることで、睡眠不足は肥満のリスクと関連すると考えられています。
ただし、睡眠不足があるからといって、必ず肥満になるわけではありません。
子どもの体重には、食事の内容や運動量、体質、家庭環境など、さまざまな要因が関係しています。
大切なのは、体重だけを見るのではなく、食事・運動・睡眠のバランスを整えることです。
成長期の子どもに無理な食事制限をさせるのではなく、しっかり食べて、身体を動かし、十分に眠る習慣を身につけることが、将来の健康にもつながります。
5.なぜ子どもは夜更かしをしてしまうの?
子どもの睡眠時間が短くなる背景には、さまざまな要因があります。
① スマートフォンやゲーム、動画
スマートフォンやゲーム機があれば、布団に入ってからも動画を見たり、ゲームをしたりできます。
「あと1本だけ動画を見よう」「あと少しだけゲームをしよう」
そんなつもりが、気づけば30分、1時間と過ぎてしまうこともあるでしょう。
2025年に公表された調査では、寝るときにスマートフォンやゲーム機などの電子端末を布団の中に持ち込む割合は、小学生で31.0%、中学生で55.7%でした。
特に中学生では、半数以上が寝床に電子端末を持ち込んでいることになります。
スマートフォンなどの使用が必ず睡眠不足を引き起こすわけではありませんが、動画やゲームに夢中になり、就寝時刻が遅くなることには注意が必要です。
また、夜間の強い光は体内時計に影響を与えることがあります。
寝る直前まで画面を見続けるのではなく、就寝前にはスマートフォンなどから離れる時間を設けるとよいでしょう。
② 勉強や習い事で忙しい
宿題や塾、習い事などで帰宅が遅くなると、夕食や入浴の時間も後ろにずれやすくなります。
やるべきことが終わってから自由時間を楽しもうとすると、どうしても就寝時刻が遅くなってしまうことがあります。
もちろん、勉強や習い事も子どもの成長にとって大切です。
だからこそ、予定を詰め込みすぎていないか、睡眠時間を削らなければならない生活になっていないか、家庭で見直してみることも必要です。
③ 思春期による体内時計の変化
子どもが成長すると、睡眠のリズムにも変化が現れます。
特に思春期には、自然と眠くなる時刻が遅くなり、朝早く起きることが難しくなる傾向があります。
これは単に本人の意志が弱いからではありません。
身体の発達に伴う生理的な変化も関係しています。
しかし、学校の始業時刻は大きく変わらないため、夜寝る時間が遅くなれば、睡眠時間が不足しやすくなります。
思春期の子どもに対しては、ただ「早く寝なさい」と叱るだけでなく、生活リズムを整えやすい環境を一緒につくることが大切です。

6.子どもは何時間寝ればいいの?
では、実際にどのくらいの睡眠時間を確保すればよいのでしょうか?
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、子どもの睡眠時間について、次の目安が示されています。
年齢 | 推奨される睡眠時間 |
1〜2歳 | 11〜14時間 |
3〜5歳 | 10〜13時間 |
小学生 | 9〜12時間 |
中学生・高校生 | 8〜10時間 |
※乳幼児の睡眠時間には昼寝も含まれます。個人差があるため、あくまでも目安として考えましょう。
例えば、朝6時30分に起きる小学生の場合、9時間眠るためには夜9時30分には眠っている必要があります。
中学生が同じ朝6時30分に起きる場合、8時間眠るためには夜10時30分には眠っている必要があります。
ここで注意したいのが、布団に入った時刻と、実際に眠り始める時刻は違うということです。布団に入ってから30分ほど眠れないのであれば、その分も考慮して就寝時刻を設定する必要があります。
また、睡眠時間を確保することだけでなく、朝の目覚めや日中の眠気、生活リズムなどにも目を向けましょう。休日に平日より何時間も長く寝てしまう場合は、平日の睡眠不足を補っている可能性があります。
7.今日からできる!子どもの睡眠習慣を整える3つのポイント
最後に、家庭で取り組みやすい対策を3つご紹介します。
① 朝起きる時刻をできるだけ一定にする
睡眠のリズムを整えるためには、朝の過ごし方も大切です。
朝起きたらカーテンを開け、太陽の光を浴びる習慣をつけましょう。
朝の光は体内時計を調整する働きがあり、夜に眠くなるリズムを整えることにも役立ちます。
また、朝食をしっかり食べることも、規則正しい生活を送るうえで大切です。
休日も平日と大きく異なる時間に起きることは避け、できる範囲で生活リズムを維持しましょう。
② 寝る前のスマートフォンやゲームを控える
寝る前の30分〜1時間を目安に、ゲームや動画を終える時間を設けてみましょう。
例えば、次のような工夫があります。
寝室にスマートフォンやゲーム機を持ち込まない
夜は家族で電子機器を使わない時間をつくる
就寝前は読書や静かな音楽などで過ごす
翌日の準備を早めに済ませておく
大切なのは、子どもだけにルールを押しつけるのではなく、家族も一緒に取り組むことです。
保護者が夜遅くまでスマートフォンを使っていると、子どもも同じように過ごしたくなるかもしれません。
家族全体で夜の過ごし方を見直してみましょう。

③ 日中に身体を動かす
日中に適度な運動をすることは、子どもの身体の発達だけでなく、睡眠習慣を整えるうえでも役立ちます。
例えば、次のような活動がおすすめです。
外遊びや散歩
自転車やボール遊び
学校の体育やスポーツ
家族でのウォーキング
激しい運動を無理に行う必要はありません。
身体を動かす機会を増やし、日中は活動的に過ごし、夜はゆっくり休むというリズムをつくることが大切です。
なお、就寝直前の激しい運動は眠りを妨げる場合があるため、時間帯にも配慮しましょう。
8.睡眠時間を確保しているのに、日中眠そうな場合は?
睡眠時間を十分に確保しているつもりでも、朝なかなか起きられない、日中に強い眠気がある、いびきが大きいといった場合は、睡眠の質や睡眠障害が関係している可能性もあります。
例えば、睡眠中に呼吸が止まる、何度も目が覚める、生活リズムが大きく乱れているといった問題です。
こうした症状が続く場合は、単なる夜更かしと決めつけず、小児科などの医療機関に相談してみましょう。
特に、強いいびきや呼吸が止まる様子、日常生活に支障が出るほどの眠気がある場合は、早めに相談することをおすすめします。
まとめ:睡眠は、子どもの未来の健康を支える習慣
日本の子どもは、推奨される睡眠時間を十分に確保できていない傾向があります。
睡眠不足は、身体の成長だけでなく、集中力や記憶、学習能力、肥満のリスク、心の健康など、さまざまな面と関係しています。
もちろん、睡眠時間を長くすればすべての問題が解決するわけではありません。
食事や運動、家庭環境なども含め、子どもの健康はさまざまな要因によって支えられています。
しかし、睡眠は毎日の生活の中で見直すことができる、大切な健康習慣の一つです。
「最近、寝る時間が遅くなっているな」「朝、なかなか起きられないな」
そんな小さな変化に気づいたら、まずは就寝時刻や朝の過ごし方を振り返ってみてはいかがでしょうか。
勉強や習い事、ゲームなど、子どもたちにはたくさんの楽しみや目標があります。
だからこそ、それらを元気に楽しむためにも、しっかり眠る時間を大切にしたいですね。

食事・運動・睡眠。この3つの習慣を整えることが、子どもの健やかな成長と将来の健康につながります。



