ばね指
ばね指は、手の指がこわばり、痛みを生じる疾患です。進行すると、指が曲がったまま戻らなくなり、力をかけて無理に戻すとばねのように勢いよく戻ることから「ばね指」または「弾発指(だんぱつし)」と呼ばれています。最初は軽い痛み程度でも、症状が悪化すると家事や仕事に大きな支障をきたすことがあるため、早期の治療で進行を防ぐことが重要です。
ばね指とは
ばね指は、手の使い過ぎなどが原因で起こる指の腱鞘炎(けんしょうえん)です。手の指にはそれぞれ「屈筋腱(くっきんけん)」と呼ばれる指を曲げるための腱(けん)があり、靭帯で出来た「腱鞘(けんしょう)」というトンネルの中を行ったり来たり移動することで、自由に手指の曲げ伸ばしができる仕組みになっています。腱とは骨に筋肉を付着させるひも状の組織であり、腱鞘は腱が浮き上がらないように抑える役割があります。
指の腱鞘炎は、何らかの原因で屈筋腱の通り道である腱鞘が肥厚(分厚くなること)し、屈筋腱が通る時に擦れてしまうことで発症します。摩擦による炎症で屈筋腱の一部が肥大化すると、腱鞘内を通過する時に引っ掛かりを生じるようになり(通過障害)、指のスムーズな曲げ伸ばしが難しくなります。さらに症状が進行すると、指を曲げた状態のまま戻らなくなり、強い力で無理に戻すと、引っかかっていた屈筋腱が腱鞘を通過する瞬間に「ばねが跳ねる」ように指が伸びるのが特徴で、これを「ばね現象」と呼んでいます。
ばね指は、どの指にも起こることがありますが、特に親指や中指に発症するケースが多く、中年以降の女性や手先をよく使う人に多く見られます。軽症のうちは痛みも軽く、休むと症状が改善しますが、悪化するにつれて痛みが強くなり、重症の場合は指が全く動かなくなることもあるため、早期に適切な治療が必要になります。
ばね指のセルフチェック
以下のような症状がある方はばね指を発症している可能性があります。気になる場合には医療機関へ早期に受診することをおすすめします。
①指の曲げ伸ばしがスムーズにできない
②指を伸ばそうとすると引っ掛かりを感じる
③指の付け根(手のひら側)に痛みや腫れ、熱感がある
④起床時に手指がこわばって動かしにくい
⑤指が曲がったままになり、反対側の手で無理に戻すとばねのように勢いよく跳ねる
ばね指の3つの原因
腱と腱鞘の炎症によって起こるばね指は、おもに以下のような要因をきっかけに起こります。
① 手指の使いすぎ
家事や仕事、運動などで日常的に手をよく使っていると手指に大きな負担がかかり、腱や腱鞘に炎症が起こりやすくなります。特に、パソコンのキーボード・マウスを使った作業やテニスや卓球などの手を酷使するスポーツを行っている方は、ばね指を発症するリスクが比較的高くなると考えられています。
② ホルモンバランスの変化
ばね指の発症には、女性ホルモンの影響が大きく関わっています。女性は妊娠・出産、閉経でホルモンバランスが大きく変化します。50歳前後の更年期の女性や妊娠後期~出産後の女性などはホルモンのバランスが大きく乱れ、腱の肥厚(分厚くなる)や腱鞘部分が狭窄(せまくなる)しやすいので発症のリスクが高くなると言われています。
③特定の疾患(関節リウマチや糖尿病など)
関節リウマチや糖尿病、透析の必要がある方などは、末梢の血流が悪くなっていることが多いため、ばね指の発症リスクが高くなります。一度炎症が起きてしまうと治りにくく、重症化しやすいのが特徴で、複数の指に症状が出る多発性のケースもあるため、基礎疾患の治療をしっかりと行うことが重要になります。
ばね指の症状
ばね指のおもな症状は、指の付け根付近に起こる痛みや腫れ、熱感で、動かしにくさを伴います。これらの症状は、腱鞘と屈筋腱の摩擦によって生じるもので、特に起床直後などの朝方に症状が強く、日中に手指を使っていると症状が徐々に緩和してくるのが特徴です。
また、肥大化し、こぶ状になった屈筋腱が、腱鞘を通過する時に引っかかることで、指の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなり、曲がった指を無理に伸ばそうとして反対側の手で力を加えると、腱鞘を通過する時に「カクン」と勢いよく伸びる「ばね現象」が起こります。ただし、症状がさらに悪化し、重症になってしまうと指が全く動かなくなり、ロッキング状態に陥ることもあるため注意が必要です。
ばね指の治療
ばね指の治療は、安静を保ち、つらい症状を和らげる保存的治療を中心に行います。ただし、保存的治療を行っても症状が改善せず、生活に大きな支障をきたすような場合には手術治療を行います。
当院では、比較的早期の場合は炎症を抑え、血流を良くしていくために「超音波治療器」によるコンビネーション治療を行います。1週間に2回程度の治療を2ヶ月〜3ヶ月ほど続けていきます。ご興味をお持ちの方はお気軽にご相談ください。
まとめ
ばね指は、仕事や家事、育児で忙しい女性など、手を日頃から酷使している方に多く発症します。比較的早期の場合は保存療法で完治することも可能ですが、重度の場合は手術が好ましいです。「手を全く使わない」というのは、難しく現実的ではないので、早期に整骨院で治療を開始していきましょう。
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